法律相談Q&A
会社登記について
Q1. 株主が1名しかいない会社でも株主総会は開催しなければならないでしょうか。
A1.
株主総会そのものを省略することはできませんが、招集方法の簡略化や委任状による決議、みなし決議などの方法により実際に株主が集まらなくても決議できる方法はあります。
株主総会は会社法に定められた機関であり、株式会社の最高機関として位置づけられています。取締役会設置会社においては取締役会が会社の意思決定機関となりますが、法律で定める事項及び定款で定める事項についてはなお株主総会の権限としてその決議を必要とします。
ご質問のように一人株主の会社では、決議に反対する者がいないため任意の方法により適宜株主総会を開催していただければよいことになります。詳しくはお近くの司法書士にご相談ください。
Q2. 取締役全員のスケジュールが合わないため、取締役会を開催できません。何か良い方法はありませんか。
A2.
会社法が定める機関の一つに取締役会設置会社の取締役会があります。これは、会社における重要な業務執行を行う機関であり、取締役全員で組織されます。取締役は会社との関係では委任契約上の義務が存在するため、重大な内容を決める場である取締役会に出席する義務があります。
ただし、定款に規定する場合に限り、書面または電磁的記録のみによる意思表示で取締役会の決議があったものとみなすことができます。
取締役会決議そのものを省略することはできませんが、このような方法を利用して会社の業務を執行することも可能です。なお、取締役会議事録には出席取締役等の記名押印が必要ですが、電磁的記録により議事録を作成した場合には電子署名を行うこととなります。詳しくはお近くの司法書士にご相談ください。
Q3. 監査役の業務範囲の登記が必要と聞きましたが、どのようなものでしょうか。
A3.
監査役の業務は、取締役等の業務執行監査及び会計の監査を行うことですが、定款に定めることにより監査役の監査の範囲を会計監査に限定することができる場合があります。
平成27年5月1日施行の改正会社法により、監査役の監査の範囲を会計監査に限ると定めた株式会社はその旨の登記をしなければならなくなりました。
ただし、平成27年5月1日以前より定款の定めを置いていた会社については経過措置がありますので、平成27年5月7日以降に最初にする監査役の就任・退任の登記とともに監査役の監査の範囲を会計監査に限る旨の登記をすれば問題ありません。
監査の範囲を会計監査に限る旨の定めが定款にあるかどうかは会社の設立された時期や規模、機関設計により異なりますので、詳しくはお近くの司法書士にご相談ください。
Q4. 同じ人が役員に選任された場合でも役員変更登記は必要でしょうか。
A4.
任期満了の前後で役員に変更がなかった場合でも、任期満了による改選で新たに役員を選任していますので登記を申請する必要があります。
株式会社の役員には任期があります。原則として取締役は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、監査役は選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。
ただし、公開会社でない株式会社では、定款に定めることによりそれぞれの任期を、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとすることができます。
なお、取締役の任期については定款に定めれば短縮することも可能です。
詳しくはお近くの司法書士にご相談ください。
Q5. 役員の住所が変わりましたが、住所変更登記はいつまでにすればよいでしょうか。
A5.
登記された事項に変更があった場合、変更が生じた日から2週間以内に変更の登記を申請しなければなりません。この変更登記を期限内に行わなかった場合、会社代表者個人に対して100万円以下の過料の制裁が科されることがありますのでご注意ください。
株式会社においては代表取締役の住所は登記事項とされていますが、代表権のない取締役の住所は登記事項とはなりません。登記されていない事項については変更が生じても登記申請は不要です。
その他の会社役員で住所が登記事項とされているものは次のとおりです。
・特例有限会社の取締役及び監査役
・合名会社、合資会社の社員全員
・合同会社の代表社員(代表社員が法人の場合の職務執行者も同様)
Q6. 知人と一緒に事業を始めることになりました。知人が全額出資し、会社の経営は私が行うことになっていますが、設立する会社を株式会社にするか合同会社かで迷っています。どちらを選んだらよいでしょうか。
A6.
合同会社とは、社員全員が有限責任社員である持分会社のことです。アメリカのLLCをモデルとして導入された会社形態ですが、株式会社と異なり、所有と経営が分離していないことが特徴です。これは出資者である社員が会社経営に携わるということを意味し、出資をしていない者は会社経営には携われません。
株式会社と比べて、公証役場での定款認証が必要ないなど初期費用が格段に安い、出資比率に関わらず自由に利益分配できる、意思決定スピードが速い等のメリットがあります。反面、人的つながりに依存するため人間関係の破綻が会社の破綻につながる、資金調達に制限がある等が挙げられます。最近では有名な会社の中にも合同会社を選択する企業は増えているようです。
ご質問の場合、お二人ともいくらかの出資をすることで合同会社を選択することも可能と考えますが、税金面や社会的信頼等さまざまな要素を総合的に判断していただき、設立する会社を選択していただけたらよいと思います。詳しくはお近くの司法書士にご相談ください。
Q7. 法務局から事業を廃止していない場合は届出るようにという内容の通知書が送られてきました。これはどういうことでしょうか。
A7.
法務局では、平成26年度以降、毎年、休眠会社の整理作業を行っています。12年以上登記がされていない株式会社について、法律の規定に基づき、法務大臣の公告を行い、管轄登記所(法務局)から通知書の発送をする作業を行っております。
そのまま放置しておくと法務局の職権でみなし解散の登記が入ります(詳細については次のQ8をご確認ください)。
通知書に記載されている事業を廃止していない届出をしたうえで滞っていた役員変更登記を行えば、みなし解散登記は回避することができます。詳しくはお近くの司法書士にご相談ください。
Q8. 数年ぶりに会社の登記事項証明書を取得したところ、「会社法第472条第1項の規定により解散」と記載されていました。これはどういうことでしょうか。
A8.
最後の登記から12年を経過した株式会社については、法務局の職権でみなし解散の登記が入ります。
株式会社においては登記事項に変更があった時から2週間以内に登記申請をする義務がありますが、少なくとも役員の任期は10年を超えることはありませんので、12年の間には登記申請をする機会があったはずです。それがなかったということは会社自体が機能していない休眠会社であると思われますので、職権によるみなし解散の登記がされたということです。
みなし解散から3年以内であれば会社継続の登記をすることで会社を復活させることができます。
なお、その前段階として12年経過した時点で、法務局から事業を廃止していない場合は届出るように、という通知書が送付されます(前のQ7をご確認ください)。
Q9. 会社の登記の添付書面に「株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)」というものがありますが、これはどのようなものでしょうか。また、役員に就任する際に添付する、本人確認証明書とは具体的にはどのようなものでしょうか。
A9.
株式会社及び特例有限会社の登記においては、株主総会の決議内容が真実であることを担保する目的で、「株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面」いわゆる株主リストを添付します。
これは、議決権の3分の2に達するまでの人数の株主(10名を超える場合は議決権数上位10名まで)の氏名又は名称・住所・株式数(種類株式発行会社は,種類株式の種類及び種類ごとの数)・議決権数・議決権数割合について代表者が証明をした書面です。書式は法務局のホームページ上でも公開されています。
本人確認証明書は役員就任や会社設立の際に必要な、役員の実在性の担保を目的として求められる書面です。具体的には次のような書面が該当します。
・住民票記載事項証明書(住民票の写し)
・戸籍の附票
・印鑑証明書
・運転免許証の写し(※)
・マイナンバーカードの写し(※)
(※)写しには、本人が「原本と相違がない。」旨記載する等の細かいルールがあります。詳しくはお近くの司法書士にご相談ください。
Q10. 会社の登記事項証明書(会社謄本)は管轄法務局以外でも取得できますか。また会社の印鑑証明書はどうでしょうか。
A10.
会社の登記事項証明書(会社謄本)は本店所在地の管轄法務局以外の法務局でも取得することができますので、最寄りの法務局で取得してください。
なお、郵送請求やオンラインによる請求も可能です。オンラインによる請求の場合、窓口請求よりも料金が抑えられます。
印鑑証明書についても本店所在地の管轄法務局以外の法務局で取得可能です。ただし、取得にあたって印鑑カードの提出が必要となります。郵送請求やオンラインによる請求も可能ですが、郵送請求の場合も印鑑カードの提出が、オンラインによる請求の場合は請求書に電子署名を付す必要があります。なお、会社の登記事項証明書(会社謄本)と同様に、オンラインによる請求の場合は窓口請求よりも料金が抑えられます。