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神奈川県司法書士会広報誌 Duranta vol.3 P6相続クイズ解説
第1問
Aには子どもがなく、妻Bと二人暮らしです。
Aの両親は10年前に亡くなり、Aの祖父と祖母も既にいません。
Aの兄弟はC、D、Eの3人ですが、Eは5年前に亡くなっており、Fという子どもがいます。
この度Aが亡くなりました。さて、相続人は誰?
① Bの1名
② B、C、Dの3名
③ B、C、D、Fの4名
正解:③
【解説】
まず、死亡した方の配偶者(夫又は妻)は必ず相続人になります。それ以外の方は次の順番で法定相続人になります。
第1順位 子ども
第2順位 直系尊属(父母等)
第3順位 兄弟姉妹
子どもがいないときは父母(父母がおらず祖父母が健在の場合は祖父母)が法定相続人になり、父母も祖父母もいないときは兄弟姉妹が法定相続人になります。
Aさんの場合、妻であるBさんは必ず相続人となります。Aさんの両親は既に亡くなっているため、兄弟であるCさん、Dさん、Eさんも本来相続人となります。しかしEさんはAさんよりも先に亡くなっているためEさんの子供であるFさんが、Eさんの相続権を引き継ぎます。これを代襲相続といいます。
よって、Aさんの相続人はBさん、Cさん、Dさん、Fさんとなります。
お子様がいらっしゃらないご夫婦の場合、妻または夫が必ず単独で相続すると誤解していらっしゃる方が非常に多いです!
すべてを妻または夫に相続させたい場合には、生前に遺言書を作成しておく等して準備しておくことがとても大切です。
家族構成によって相続人が変わるため、相続手続きはとても複雑です。
自己判断せず、専門家である司法書士に相談しましょう。
第2問
Aの両親は、Aが幼いころに離婚。Aは母親に引き取られ、その後父とは何十年も連絡をとっていません。
ある日、突然金融機関から連絡があり、Aの父親が1年前に亡くなったこと、Aが相続人なので父親の借金百万円を支払うようにと請求されました。
Aは金融機関からの連絡で初めて父親が亡くなったことを知りましたが、なんとか相続放棄ができないものかと悩んでいます。
さて、Aの相続放棄について、正しいものは次のうちどれ?
① Aは金融機関から連絡があった時から3か月以内であれば相続放棄できる。
② 父親が亡くなったのは1年前なので、Aは相続放棄はできない。
③ Aは両親が離婚して母親に引き取られたので、そもそも相続人ではない。
正解:①
【解説】
相続放棄の手続きは、「相続人が被相続人の死亡を知り、自分が相続人であることを知ったときから3ケ月以内」に行う必要があります。
Aさんの場合、金融機関から『父親が死亡し、Aさんが相続人である連絡を受けたときから3ケ月以内』に相続放棄の手続きを行えばよいことになります。
父親が亡くなった日から数えるのではありません。間違えやすいので気を付けましょう!
また、離婚した父親であっても、Aさんとの血のつながりはなくなりませんので、Aさんは父親の相続人になります。
相続放棄は手続きできる期限が定められているので、迅速に手続きを行う必要があります。実は資産があったので相続放棄をする必要がなかった、ということもあるので、手続きを行う前には慎重に調べる必要があります。
必要な場合には、相続放棄できる期間を延ばす方法もあります。
一人で悩まず、専門家である司法書士に相談しましょう。
第3問
Aの父親が亡くなりました。相続人は長男A、長女B、Aの母親Cです。Cは認知症で会話もできず、施設に入所しています。そこで、AとBで話し合い、父親の遺産である預貯金や不動産はすべて長男Aが相続し、その代わり母親Cの施設のお金をAが代わりに支払うことにしようと決めました。
Aは早速、手続きを依頼するため司法書士Dのところに相談しに行きました。
さて、司法書士Dの発言で正しいものはどれ?
① 「Cさんと会話できないなら、遺産分割協議書にはAさんとBさんの署名捺印だけでいいですよ」
② 「Cさんがそういう状態なら、成年後見の申立てをして後見人とAさんBさんの3人で協議しましょう」
③ 「相続分は法律で決められているので、Aさんが遺産の全部を相続することはできませんよ」
正解:②
【解説】
遺産分割協議は相続人全員が合意する必要があります。お母様が認知症で会話もできない場合は、判断能力がないため遺産分割協議に参加することができません。このような場合は、家庭裁判所に対して成年後見の申立てをして、裁判所から選任された成年後見人と遺産分割協議を行う必要があります。
なお、相続人の法定相続割合は法律で決められていますが、相続人の合意で自由に変更することができます。ただし、相続人全員が遺産分割協議に参加する必要がある、ということなのです。
成年後見の申立ては、裁判所に多くの書類を提出し、何か月もかけて手続きを進めていくためとても大変な手続きです。
このような事態を避けるため、生前に遺言書を作成しておく等して準備しておくことも大切です。
遺言書作成、成年後見の申立て、遺産分割協議書の作成等については、お近くの司法書士にご相談ください。